友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
前に同じ景色を見たのは、香澄の葬儀の時だった。

悲しみに暮れながら、それでも心のどこかで渉に会うことを恐れていた。



そっとお腹に触れる。

妊娠前のズボンはもうきつくなってお腹を締め付けるのが気になり、最近はワンピースを着ることが多い。

まだ胎動は感じなくても、あの日から復活したつわりがそこにいることを実感させてくれた。

手に持っている小さなバックから、私は母子手帳を出す。

ページを開くとそこにはエコー写真がはさんである。

ただの点が丸になって、今では小さな小さなキューピーのような形に成長している我が子。

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