友達の恋人 ～ 一夜からはじまる愛の物語 ～

少しでも何か温かい言葉を期待した自分に後悔する母の言葉が来るとは知らず。

「ちゃんとカギ閉めて出てよ？あんた、まだカギ持ってたのね。」
「・・・」

何も言えないまま母を見ていると、母はすぐに私に背を向けて仕事へ行ってしまった。

振り返らずに。



しばらく母が去った場所を見つめてから、私は玄関の開いたままの扉を閉めて、カギをかけた。

家の中には、入らない。

入る必要・・・ないか・・・。