友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
公園に行くと大抵は渉が先にベンチに来て座っている。

はじめは挨拶すらしないで、ただ私は泣いて、泣き止んだら帰るだけで、渉は何も言わず視線も私に向けずにただ座っているだけだった。
でもいつの日にか私たちは話をするようになっていった。

「おう」
そっけない挨拶をする渉に私は「おう」と同じくそっけない返事を返す。

それだけでくすぐったい感情になれたのは、気づかないふりをしていたけど明らかに”好き”という感情なんだと思う。

そして、高校生になるころには私たちは並んだふたつのベンチの同じ方に一緒に座るようになっていた。

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