友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
「それでも・・・ごめんなさい・・・」


その時母が立ち上がり私の方へ来た。

少し戸惑ったようにしゃがみ、私と目線の高さをあわせた。
そして・・私の涙をあたたかな手で拭うと私の体を抱きしめてくれた。

「もう・・・苦しまないで・・・。私たちがあなたを・・・苦しめてごめんなさい。」
母に抱きしめられた記憶が私にはない。
そのくらい小さい時しか抱きしめてもらっていないのだと思う。

「幸せになって。赤ちゃんもうまれるんでしょ?玲奈・・・幸せになってね。」
母のぬくもりに包まれて私は大きく頷いた。

「赤ちゃんが生まれたら、抱っこさせてね」
もう一度頷く。

どこか懐かしい母のぬくもりとにおい。
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