友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
今まで渉が受賞した広告のデザインも、どれも優しい色使いで、私は好きだ。
「この曲線が好き」
「ん?」
「今、結構斬新なデザインや色遣いが多いでしょ?」
「流行だからな。カラーもはっきりしたものが選ばれやすいし」
「でも、渉のデザインする広告はどこか懐かしくて、優しくて、好き。」
「それはどうも」
私の言葉に渉は耳を真っ赤にして視線をそらした。

昔の渉を思い出す。

いろいろな思いがあって、多くは語らなかった渉。
印象に残っている渉の姿も、べらべらと多くを話すタイプではなかった。
ただ、必要な言葉は必ずくれるような人だった。

今は大人になって、気持ちをまっすぐに伝えてくれて、私を心配していろいろと気遣った声もかけてくれる渉。社会に出て、人とのかかわり方も変わったことを感じている。

でも、こうして耳を赤くして、照れた時に視線を外す様子は全く変わらない。
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