友達の恋人 ～ 一夜からはじまる愛の物語 ～

『私、今のままだったら玲奈を置いて逝けない。死んでも死にきれない。』
そう言って俺に協力してほしいと懇願する香澄の顔には、大きな悲しみと絶望の中に、強い決心のようなものを感じた。

「誰よりも玲奈を知ってた香澄は、玲奈の弱さも、儚さも、知ってたからあんな嘘をついたんだ。」
新しい涙が次々に玲奈の頬を伝う。

「自分が死んだ後の世界で、玲奈が強く生きられるように。」

その言葉で玲奈はすべてを悟ったような表情になった。

玲奈にとって香澄は唯一無二の存在だ。
それは玲奈にとっても香澄にとっても同じだった。

香澄は自分の命が終わることを知った時、自分が死んでいなくなった世界で玲奈が生きていけるように、最初で最後の嘘をついたんだ。玲奈に。


玲奈が大切だから。
ほかの誰よりも玲奈を心配して、玲奈を想っていたから・・。