友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
香澄と渉はすぐに付き合い始めたわけじゃない。
バスケ部の部員とマネージャーとして、私たちの奇妙な関係は続いた。

なるべく香澄と渉の邪魔をしないように。
香澄の恋の応援ができるように。
渉と距離をとるようにした私は緑ヶ丘公園に行くことをやめて、たまたまその時告白してくれた違うバスケ部員と付き合った。結局1か月と持たずに別れたけど。

どうにかして自分の気持ちをごまかして忘れたかったから。

渉との距離を遠ざけたかったから。

私なりに必死だった。

居場所をいくつも同時に失って、香澄からも渉からも唯一の泣き場所からも、私は距離をとり、自分の殻にこもった。

納戸にあたる私の部屋には私の体がすり抜けられるくらいの窓がひとつしかなくて、その狭い窓から見える空を見上げながら、膝を抱えて、暗闇にそのままとけてしまいたいと何度も願った。
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