友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
懐かしい渉のぬくもり。

香澄の気持ちを知ってから、ずっと私が避けて、逃げていた。

このぬくもりを知って、私は渉を好きになった。
だからこそ再びこのぬくもりに触れたら、私は押し込めると決めた気持ちが溢れそうで怖かった。


想いを封印するために。
私を救ってくれた香澄の気持ちを守るために。
大切な渉に私の闇をうつさないように。

何年も何年もこらえてきたものが一気にあふれ出す。

幼い子供のように、胸の中で泣き出す私を、抱きしめる手に力を入れながら渉は何も言わずにそこにいてくれた。

まるで、昔隣同士のベンチに並んで座っていたあの日のように。

何も言わず。ただ、そばに渉はいてくれた。
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