友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
なのにそれ以上の力で渉が私の手を握り返し、前だけを見ていた渉が私の方を見る。

「・・・帰る・・・」
私の言葉に、渉のそれまでの険しくもとれる表情が急に不安げにくもる。

そんな顔をされたら・・・渉の熱いくらいの手から逃れようとしていた手から力が抜ける。

そのまま私は渉に手を引かれて、マンションの扉を抜けてエレベーターに乗り込んだ。


エレベーターの表示は12階まであるらしい。
渉の部屋があったのは12階だった。

まさかの最上階かと確認をする余裕がまだ私にはあったらしいことに驚きながら、渉に手を引かれエレベーターから降りて、歩いていく。

渉が一室のドアに触れると、カギが開く音がフロアに響いた。
廊下にも絨毯がひかれているホテルのようなマンション。
どうして今場所に住めるのだろうか。

渉が少し遠い人に思える雰囲気に、私は少し寂しく思った。
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