友達の恋人 ～ 一夜からはじまる愛の物語 ～

「あっ・・・！」
書類に手を伸ばした渉の手が、置いたばかりのカップにあたりコーヒーがこぼれてしまった。
すぐにカップを戻そうと手を伸ばした私の手を渉が咄嗟につかむ。
「えっ？」
「やけどしたらあぶないから」
そう言って渉がカップをもとに戻す。

「今拭くものをご用意いたしますね」
主任がすかさず会議室から出る。

「申し訳ありません」
ほかの社員たちの視線を感じて私は慌てながら頭を下げる。
大切な資料がコーヒーで汚れてしまった。

「いえ、私が落としてしまったんです。すみません。代わりの資料もありますからお気になさらないでください。すみません本当に、けがはありませんか？」
渉がすぐにフォローをいれる。
「大丈夫です」
床に落ちた資料を拾おうとして、はっとする。