友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
「それでは」
化粧室の前で私はあくまで渉と距離をとりながら小さく頭を下げて、会議室へ戻ろうとする。

「玲奈」
背を向けた私の名前を呼ぶ渉。

「ここは会社だから。やめてください。」
距離をとりながら言う。

「いやだ。やっと見つけたんだ。」
渉は私の腕をつかみ自分の方に体を向けた。
「今夜、ここの会社の隣にあるカフェで待ってる。来るまで待ってるから。」
そう言いながら、私の手に紙を握らせる。

「俺の連絡先。いつでも連絡してほしい。」
「・・・困ります」
「あきらめないから。俺。」
渉の強いまなざしに、逃れられない。

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