友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
「会わなければよかったって思ってる」
「え?」
「忘れたかったの」
「・・・玲奈?」
「すべて捨てたかった。過去を。」
私の言葉に、渉が言葉を失う。

悲しそうな表情にかわる。

まっすぐだった視線が揺らぐ。

「全部忘れたかった。全部捨てたかった。過去を。だから渉にも背を向けて、私を知る人のいない場所で生きていきたかった」
「・・・」

渉の目を見る。

どうか今だけは本心が渉に気づかれませんようにと願いながら。
< 98 / 367 >

この作品をシェア

pagetop