友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~
「渉を見ると、つらいの。昔を思い出して。過去を思い出して。つらくてたまらないの。」
鏡の中の自分を見ながら練習してきたように、言葉を続ける。

「だから、渉とも会いたくなかった。」
「・・・本心か?」
「本心。だから渉に背を向けて、距離をとったのに。なのに、会っちゃうなんて思わなかった」

ごめんね・・・渉・・・

でも私にはこれしか思いつかなかったの。

あなたを傷つけて、拒絶して、私なんか忘れて前に進んでもらうためには。

これしか思いつかなかった。

「あの夜は、つい懐かしくて。ごめんね。」
「・・・」
辛そうな顔の渉。

ずきずき心が痛む。
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