Fake love(2)~離婚からはじまる社長の深愛~
カウンターでブラックを購入し、二人掛けのテーブルの椅子に腰を下ろした。
そして、黙ってコーヒーを啜る。
沈黙を破ったのは筒見社長だった。
「以前にもこうして…妻に付き添ったコトがあるんですよ…でも・・・流産してました…」

筒見社長は悲痛な声で俺に話を始めた。

「実はね…俺…六年ほど前に脳腫瘍を患って…抗がん剤の影響で…生殖機能を失いました。
同時に記憶も失ってしまって…妻との出逢った時の記憶がなくて・・・妻に一人で玲也を産ませ…苦労させました…」

「・・・そうだったんですか…」

「でも・・・医者の勧めて抗がん剤治療を受ける前に精子を冷凍保存して…半年前…妻の強い希望で体外受精を試みました。無事に妊娠はしたんですが…妊娠九週目で流産…今回は二度目の体外受精で…これが失敗すれば…二人目は諦めようと妻と話をしています…普通に子供を授かるコトの出来る夫婦が本当に羨ましいですよ」

「ウチは二度流産して…一度…死産を経験しています…妻はその後『不育症』診断されて…今回の妊娠も順調に子供が育つか分かりません…でも、筒見社長にはお一人玲也君と言うご子息がいるじゃありませんか・・・俺と睦月の間には一人も居ないんです…俺は貴方方は羨ましいですよ…」

「神楽坂社長…」

「でも、今回の妊娠でダメなら…俺達は子供を諦めて、夫婦二人で暮らしていくつもりです」

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