Fake love(2)~離婚からはじまる社長の深愛~
懐かしのレシピ
翌日、午前中は仕事がなく空いた時間を利用して、紗羅さんから訊いた朔斗君の好きなキャラクターのお弁当作り。
慣れた手つきでiPhoneを撮影用のスタンドに固定する。

幼稚園児のお弁当箱は小さく、朔斗君は好き嫌いが多い偏食児。
紗羅さんは毎日の献立にも悩み、その上にキャラ弁作りの悩みも加わり、キッチンに立つのが憂鬱だそうだ。

私のキッチンはアイランド型。
このキッチンから私の人生が一転した。
料理研究家の母に勧めれ、同じ世界に入った。「健康は日々作る料理から」とそれが母の座右の銘。鬱病になっていた私は半信半疑だったけど、母のアシスタントをしていく間に心の病をみるみると回復していった。
今となっては母に感謝している。
そして、空いた時間を利用して、このキッチンで手軽に出来るレシピの下となる料理を作り、撮影、動画編集、そして「YouTube」にアップ。
一人四役をこなしてこまめに動画もアップして、ちゃんねる登録者を増やした。

ちゃんねる登録者にはお馴染みのキッチン。

そうこうしているうちに朔斗君の大好きなキャラクター弁当は完成。

私は紗羅さんにiPhoneで撮影したキャラ弁のレシピ動画をラインで送信した。

食べてくれる人がいる。
それだけで作り甲斐があるけど、生憎私には食べてくれる相手はいない。

キッチンから見えるテディベアを見つめ、嘆息する。




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