ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?
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英語を話すとき、夏雪の声はまるで別人になる。

普段は高くもなく低くもない落ち着いた声をしてる。言っている内容はともかく、男の人にしてはソフトで優しい声だと思う。

それがひとたび英語に変わると何故かオクターブ低めのバリトンボイス。どうして声を変えてるのか聞いたところ、「同じです」とあっさり返事が返ってきた。本人はまるで無自覚のようだ。


どうやら英語と日本語で声の高さが変わるのはバイリンガルの「あるある」らしい。発声の仕方が全く違うからね、と英会話の先生が教えてくれた。



「それにしても、なぜ英会話を始めたのですか?

学校教育で6年も習っていたとは思えないほど英語が苦手なあなたが…」


「なにおぅ!?」


夏雪は首を傾げて、純粋に不思議がっている。彼のナチュラルに不遜な物言いは恋人となった今も健在である。


「わたしにも向上心くらいあるんだってば!
仕事でも、海外旅行とかでも使えた方が良いでしょう?」


「そういうことなら俺が教えます。教室で習うより一対一で話す方が学習効果も高いですよ」


「え?いいってば…」


英会話のテキストを覗き込む夏雪から逃げて後ずさりする。忙しい夏雪に英語の授業なんてさせられないし、そもそも、夏雪に講義をされたら内容なんて頭を素通りしていくに決まってる。

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