ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?
「なるほど。さすが透子。あなたの聡明さには舌を巻きます」
「巻いてないで、帰ろうよ」
「しかし、購入した指輪を全て毎日身につける必要はありません。透子が日々選んで好きな指を飾れば良いだけの事です。」
「そうかもしれないけど…でも!
こんな豪華で素敵な指輪をぽんぽん買って貰うわけにはいかないの!」
夏雪が首をかしげて思考し、はたと気が付いたように表情を明るくする。
「なるほど。贈与税の支払いを懸念しているのですね」
「そんなわけあるか…」
どこのアラサー女子が彼氏のプレゼントで贈与税の支払いに頭を悩ませるっていうんだ。夏雪へのツッコミに慣れつつある私も、ショッピングがこれほど非常識な展開になるとは想像しなかった。
「透子はしっかりものですね。」と夏雪はキ
ラキラの笑顔を浮かべている。大ボケしている時ですら宿命のようにカッコいいのだから呆れる。
「大丈夫です、節税対策は抜かりありません。それは、」
「節税しなくていい!
何度も言うけど豪華な指輪とか必要ないから。今欲しいのはハリセンだけ。今すぐあんたのド天然な頭をポカッとやりたいのっ!」
「ずいぶんと猟奇的な事を願っているのですね。何ですかその物騒な物品は…?」
「夏雪に物騒とか言われたくないわっ。上方漫才の至宝よ。ジャパニーズ トラディッショナル カルチャーよ!」
「ふむ…伝統文化。それが透子の望みですか」
訳のわからない納得をする夏雪を引っ張って店内を出る。店員さんに、無駄な残業をさせてごめんなさいと心の中で深く謝った。