ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?
夏雪はジャケットの内ポケットから赤い長方形の小箱を取り出す。中にはさっきベリーウィンストンで見た一粒ダイヤのネックレスが入っていた。光が溶けるように輝いて、余計な飾りを一切必要としない美しさ。


「…!」


「少しじっとしてください。」


何かいう前に夏雪がネックレスを手にとり、首の後ろに手を回した。重さを感じないチェーンが肌を滑り、首筋にくすぐったくて淡い感触が走る。


「これ…素敵過ぎて、私にはもったいないよ…」


「怖がらなくて大丈夫ですよ。こういったもので透子を縛るつもりは、ないですから。」


「?」


その答えの意図がわからなくて夏雪を見上げると、困ったように笑い、「何でもないです」と首を降った。彼の笑顔がほんの少し陰りを帯びているように見えるたは、気のせいだろうか。


「…ありがとう。これ、外さないでずっと着けてようかな。でも私が着けてて本当に変じゃない?」


「似合ってますよ、保証します。後で俺の部屋に着いたら、好きなだけ鏡で確認するといい」


「…うん」


夏雪の言葉に含まれる意味に意識が向いて、返事は不自然に小さな声になってしまった。

恋人だから彼の部屋で2人で過ごすのは当たり前なのかもしれないけど、こういう時はドキドキして何も言えなくなってしまう。2人で夜を過ごすのも、久しぶりだし…。


「…っ」


夏雪の指がネックレスのダイヤを揺らして、微かに鎖骨に触れた。くすぐったいのと、もっと触れて欲しくなるのを押し殺すように唇を噛んで、それでも顔が熱くなるのは止められない。


「可愛い…もっと困らせても良いですか?」


「ばか」
< 22 / 62 >

この作品をシェア

pagetop