ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?
浴室には照明やミストサウナなどと共に壁の色を変えるボタンがある。押してみると透明だったガラスがすりガラスに変わった。さすが最新の設備。
ふむふむと納得しつつ洗面台に戻ると、視界の端がキラッと輝く。鏡に映るネックレスだ。
「綺麗…」
さっき夏雪が着けてくれたネックレス。控えめで品が良くて、吸い込まれそうなほど美しい。似合うと言ってくれたあの時はまだ、二人だけの時間が続くと思っていたのに。
思い出すととたんに淋しくなってしまい、綺麗なネックレスを見ているはずの視界が潤んで歪んでくる。
我が儘を言うつもりなんてない。困らせたくない。そう思うけれど、最後に二人きりで朝まで一緒にいられたのは、もうどれくらい前の事だろう?
ばちんっ
両頬を叩いて気合いを入れ直す。夏雪は今大変なんだもの。私が彼の支えにならなきゃ。そう自分に言い聞かせて、大きなベッドの片隅に丸まって眠りについた。
その、翌朝のこと。
「真嶋夏雪様からのお届けものでございます」
「え…はい?」
「失礼します」と女性が丁寧に荷物を運び入れるのを、寝惚けた頭でぼーっと見過ごす。あるものは箱をあけてハンガーに、別のものはシュークローゼットに、あるいは洗面所に。
お届け物と言うにはあまりに多くの物が収納されていく。