ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?


「夏雪様はご活躍の一方で財閥内での政敵も多いお方です。ですから、矢野さんに万一の事があってはならないとご心配なさっているのですよ」


「はい…」


明らかにしゅんとなった私が可笑しかったのか、九重さんがくつくつと笑う。


「これも人生の休暇と割り切って、ここでの生活を楽しんでみるのはいかがでしょう?
ビーチこそないですが、その他はリゾートさながらの施設が揃ってますよ」


そう言われても、この豪華な施設で悠々自適な生活を送れる気がしない。どこに行っても緊張してびくびくしそう。何か他にやれることはないかな…。


そうだ。


「ここでは自由にしていいんですよね?この施設の中でなら情報を集めていいですか?」


「…聞かなかったことにますね」


九重さんは苦笑いで見逃してくれたらしい。それ以上追及されることなく帰っていった。懐の深さにありがたく甘えることにする。



「さてと。人が集まりそうな場所を探さなきゃ」


パンツスーツからワンピースに着替えて、少しでもお嬢様っぽく見えるように髪も巻いて再出発。

なにせハイソな施設なのだ。お茶会や料理教室など、育ちの良さが求められる所は私には無理。


「ワインパーティー…ここならいいかな」


レジデンスの入居者なら無料と聞いてワインパーティーの会場に入ってみたところ、会場内の人がざわっとした。なんだか異様に見られている気がする。
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