ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?
ついて行って、いいのかな…。

この人が真嶋家の家系図を悪用する犯人の可能性は低いし、深追いする意味はないのかもしれない。


けれど話の続きがつい気になってしまい、返事を迷っている間に中庭まで来てしまった。


「彼の代で止めたら蘭さんも浮かばれないでしょ。プリマドンナとしてのキャリアを棄ててまで真嶋の姫になったのに」


「それでは、まるで蘭さんという方が犠牲になったように聞こえるんですけど…」


「君、珍しいね。こんな場所に住んでるのに何も知らないなんて」


やば…。

私が知らないだけで、もしかしたらこの界隈では常識の話かもしれないのだ。立場がバレないように「最近まで海外に住んでいたので」とごまかした。


手渡してもらったワインに口をつけると蜂蜜の甘い香りがする。


「真嶋蘭さんは、嫁いで子供を産んですぐに亡くなったんだよ。

あんなに美しくなければ、真嶋家の姫に迎えられることもなかったろうし、プリマドンナとしてもっと活躍できただろうね。

ああ、でもキレイじゃないとプリマドンナになれないはずだし、意味のない仮定の話だけど。」


「蘭さんという方は、無理に結婚させられたんですか?」


「どうだろ。彼女も嫁入りと交換条件に所属してるバレエ団に支援してもらったみたいだし、ギブアンドテイクじゃない」


「ギブアンドテイクの結婚…ですか」


「ふふ、女性にそういうこと言うとウケが悪いのは知ってる。でも政略結構と同じだと思うよ。

ずっとそうしてきたんだから、今になって止める必要ないと思うんだけどな。みんな真嶋家の真珠が磨かれていくのを楽しみにしてるんだ。結局は夏雪さんのあの顔だって樫月の財力の結晶なわけだし。

樫月グループの僕たちは、彼の一族を誇りに思ってる。あの血統を作るだけの財力を維持してるんだから、彼らの美貌を愛でる権利だってあるでしょ」


「そんな…愛でるって…。彼は人形じゃないですし」


「そうだね。どんなに美しい顔をしていても彼だって男だ。この時代最高の美女を抱いて彼の子孫を残すのは、至福の栄誉だと思ってるはずだよ」
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