ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?
指が痛くなるほどネックレスを握りしめると、ぷちんと何かが外れる。



その瞬間にキーーーーンとけたたましい音が聞こえた。耳が壊れるかと思ったのは私だけじゃなかったようで、私に覆い被さっていたその人が呻き声をあげて動かなくなる。


「え…?」


何が起きたのか分からないうちに、重かった体が解放された。

まだ耳鳴りが残る鼓膜に、人がもみ合う鈍い音が聞こえくる。


「透子!」



不意に一番聞きたかった声が響いた。

突然だったから幻聴が聞こえたのかと思ったけど、目隠しを外された視界には、きつく眉間を歪めた夏雪の顔が見える。


「大丈夫か!?」


「な…つ…」


怪我はないか、気分はどうか、怖い思いをしてないかとたくさん聞かれるけど何も答えられない。抱えあげられて夏雪の腕の中に収まると、これまで我慢できていたのが嘘のように涙があふれた。



「夏雪…」



背中をぽんぽんと擦られて、子供のように彼の胸に顔を擦り付ける。夏雪の手が震えてるような気がしたけど、震えてるのは私の方かもしれない。



「あの車のナンバーを覚えてますから、後の事は心配いりません。」


「違うの。ネックレス…切れちゃって、きっと車に落としてる。ごめん、ごめんなさい。どうしよう…」


「ああ、それでしたら」と夏雪が首筋に触れると、何故かまだチェーンの感触がする。
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