ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?
心持ちむーっとした顔でそう言うと、夏雪はまるで自分の寝床に入るようにベッドに入ってきた。背中に夏雪の腕の重さがかかって、急なことにドキドキして体が固まってしまう。
「私、い、今お酒臭いし、あんま近くに…」
「本当にそうですね」
「もう、自分で近付いたのに文句言わないでよ」
臭いとか言うわりに離れることもなく、キングサイズのベッドは殆どのスペースを余らせたままだ。おでこに夏雪の前髪が触れて、慣れない距離感に戸惑う。
「あなたが飲まされていたのは、甘さのわりにアルコール濃度の高いカクテルです。女性を酔わせて悪用されることが多いんですよ。全く、どれだけ無防備なんです?」
「ごめんなさい…」
今日のことは本当に自分に反省するしかない。あんまり喋ったらよけいにお酒臭いと思うから、自然と小さな声になる。
「九重が、あなたはここでの生活やパーティーをとても楽しんでいるようだから、と」
「九重さんが…?そ、そういえばそんな話もした…かな?」
九重さんは私が勝手に夏雪の家系図のことを調べているのを黙っていてくれたみたい。そんな理由で辻褄を合わせてくれてたんだ、と心の中で納得した。
「恋人だとしても、ひとりで過ごす時間に口を出すと嫌われると諭されたんですが」
「そうなの…かな?私はよく分からないけど、
…って、二人でそんな話してるの?」
九重さんに恋愛相談してる夏雪を想像するとむちゃくちゃ可愛い。けれど、笑ったら仕返しのようにむにっと鼻を摘ままれてしまった。
「む」
ただでさえ整ってない顔がもっと崩れて見える。「やめてよ」と手を退けようとすると、手のひらが重なって指先が絡んだ。さっきからずっとドキドキしてるのに、また胸が疼くようにきゅっうとなる。
「あなたらしくないから不思議だったんですよ。
透子はパーティーで気さくに振る舞うことはできるけれど、気を遣い過ぎて楽しめるタイプじゃないはずです。
先日の同期会でもそうでしたよね?」
「そう…なんだけど」
冷静に自分のことを分析されてるのが妙に悔しい、しかもだいたい当たってる。気さくに見えるかは分からないけど、感じよく振る舞うことに気をとられて疲れてしまうのは確かだ。
「それなのに何故、夜毎に違う相手と熱心に酒を飲んでいるのですか?
あなたのことだから、どうせ数多の男に口説かれたでしょう」
「夏雪とは違うもん。キミの彼女は残念ながらモテモテじゃないですよーだ。」
「ふふ、何故ふて腐れるんですか。
そう油断してるところが透子の良さでもあり、危なっかしい部分でもありますね。
あなたは自分の魅力を少しも分かってないから」
顔にかかる髪を耳にかけられ、頭を撫でてくれる。息ができないほど幸せなのに、同じくらい胸に痛みが走った。
「無いよ、私に…魅力なんて」
無意識のうちに涙が落ちて、夏雪の指が頬の涙に触れる。
「透子?」
「…っ」
泣いてるのを認めたくなかった。こんなことで泣いたら、曖昧にしていなきゃいけないことを確認する羽目になる。相変わらず夏雪の前だと涙腺の制御が効かないのが辛い。
その時夏雪の携帯が鳴って、彼はベッドに腰かけるようにしてその電話を受けた。背中越しに小さく聞こえてくる声は女性のものだ。
こんな真夜中に電話をかけてくる人は誰?
って聞いたらウザいのかな。
でも、もしかして、この人が真嶋の姫とかいう人だったら…
頭の中に色んな考えが浮かんできて、枕に顔を押し付ける。電話ひとつで嫉妬するような今の自分を見られたくない。
「私、い、今お酒臭いし、あんま近くに…」
「本当にそうですね」
「もう、自分で近付いたのに文句言わないでよ」
臭いとか言うわりに離れることもなく、キングサイズのベッドは殆どのスペースを余らせたままだ。おでこに夏雪の前髪が触れて、慣れない距離感に戸惑う。
「あなたが飲まされていたのは、甘さのわりにアルコール濃度の高いカクテルです。女性を酔わせて悪用されることが多いんですよ。全く、どれだけ無防備なんです?」
「ごめんなさい…」
今日のことは本当に自分に反省するしかない。あんまり喋ったらよけいにお酒臭いと思うから、自然と小さな声になる。
「九重が、あなたはここでの生活やパーティーをとても楽しんでいるようだから、と」
「九重さんが…?そ、そういえばそんな話もした…かな?」
九重さんは私が勝手に夏雪の家系図のことを調べているのを黙っていてくれたみたい。そんな理由で辻褄を合わせてくれてたんだ、と心の中で納得した。
「恋人だとしても、ひとりで過ごす時間に口を出すと嫌われると諭されたんですが」
「そうなの…かな?私はよく分からないけど、
…って、二人でそんな話してるの?」
九重さんに恋愛相談してる夏雪を想像するとむちゃくちゃ可愛い。けれど、笑ったら仕返しのようにむにっと鼻を摘ままれてしまった。
「む」
ただでさえ整ってない顔がもっと崩れて見える。「やめてよ」と手を退けようとすると、手のひらが重なって指先が絡んだ。さっきからずっとドキドキしてるのに、また胸が疼くようにきゅっうとなる。
「あなたらしくないから不思議だったんですよ。
透子はパーティーで気さくに振る舞うことはできるけれど、気を遣い過ぎて楽しめるタイプじゃないはずです。
先日の同期会でもそうでしたよね?」
「そう…なんだけど」
冷静に自分のことを分析されてるのが妙に悔しい、しかもだいたい当たってる。気さくに見えるかは分からないけど、感じよく振る舞うことに気をとられて疲れてしまうのは確かだ。
「それなのに何故、夜毎に違う相手と熱心に酒を飲んでいるのですか?
あなたのことだから、どうせ数多の男に口説かれたでしょう」
「夏雪とは違うもん。キミの彼女は残念ながらモテモテじゃないですよーだ。」
「ふふ、何故ふて腐れるんですか。
そう油断してるところが透子の良さでもあり、危なっかしい部分でもありますね。
あなたは自分の魅力を少しも分かってないから」
顔にかかる髪を耳にかけられ、頭を撫でてくれる。息ができないほど幸せなのに、同じくらい胸に痛みが走った。
「無いよ、私に…魅力なんて」
無意識のうちに涙が落ちて、夏雪の指が頬の涙に触れる。
「透子?」
「…っ」
泣いてるのを認めたくなかった。こんなことで泣いたら、曖昧にしていなきゃいけないことを確認する羽目になる。相変わらず夏雪の前だと涙腺の制御が効かないのが辛い。
その時夏雪の携帯が鳴って、彼はベッドに腰かけるようにしてその電話を受けた。背中越しに小さく聞こえてくる声は女性のものだ。
こんな真夜中に電話をかけてくる人は誰?
って聞いたらウザいのかな。
でも、もしかして、この人が真嶋の姫とかいう人だったら…
頭の中に色んな考えが浮かんできて、枕に顔を押し付ける。電話ひとつで嫉妬するような今の自分を見られたくない。