ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?
「…九重さんには嫌われちゃったけど、私は九重さんのこと、けっこう好きだよ。
あの人だって、私みたいな悪い虫を夏雪に寄せ付けたくないから企んでたわけでしょ?
家系図のことネットに上げて、なんにも知らない私に真嶋家のこと教えてくれてさ。」
「だからといって、透子が危険をおかしてまで彼を庇う必要はなかったはずです」
「そうかもしれない。
けどね、もう私にはどうでもいいことなんだ。
やっぱり、私には違うって思うから」
「違うとは…?」
「家系のこと聞いたときはわからなかったけど、だんだんね、『そう言われてみれば』って思うようになったの。
代々、いろんな美男美女が結婚を重ねてその顔にたどり着いたんでしょう?
その責任も背負わずに自分の生きたいように、生きるって無責任だと思うな。」
今の私は夏雪が一番言われて傷付く言葉を知ってるし、一番嫌いな考え方だって知ってる。
「誰だってどこか不自由に生きてるじゃん。組織の歯車になったり、親のお店をしぶしぶ継いだり。そう言うのと何が違うの?
夏雪はずっと、きれいなお人形のままでいいんじゃない?」
「透子、それはどういう…」
「私は人形の妻は嫌だけど」
彼の失望も、軽蔑も、傷付いた眼差しも、最後の勇気を振り絞って真っ直ぐに見据えた。その時の彼ほど悲しくて美しくて、胸が苦しくなる顔は、この世にないと思う。
「話すことはこれ以上無いの。だから、会うのはもうこれが最後ね」