ロマンスフルネス 溺愛される覚悟はありますか?
「当時の俺は少なくとも、クロエへの感情が恋だと信じて疑わなかった。今より自分に失望していて、何も見えないクロエの存在にはとても癒されました。
つまり、彼女のことは好きでしたが、目が見えないところに安らぎを感じていました。酷い人間だったと反省しています。」
「でも、瞳をあげても惜しくない人だったって」
「そうですね。仮の話ですが、透子が失明したとして、瞳を移植してほしいと頼まれたら二つ返事では答えられないと思います。」
「うん、そうだよ。わかってるから」
だってそれが、彼女とわたしへの愛情の差だもの。辛いけど受けとめなきゃ。
「俺はあなたを見ていたい。ですから、今となっては、見えなくなるのは困るのです。けれどあなたに見つめて欲しいとも思う。だから、片方の瞳で手を打たないかと交渉しますね。」
言葉の意味に、世界がひっくり返ったような衝撃を受ける。私はもしかして、初めから全部間違えていた?
「クロエにはそういった感情を持てなかった。人助けのつもりで簡単に瞳を渡せたのです。だから彼女を酷く傷付け、当時の俺は傷付けたことすら自覚できない愚か者でした。」
「でも…!
えっと…キス…したし。私のこと、クロエと思って」
「………
あー…、あれですか?ふふっ、案外透子はヤキモチとか焼く方なんですね。嬉しいです」
「何それ!笑って言うこと?」
「あれは蘇生法です。水吐かせたかったんですよ。仮にクロエでも他人でも、あの九重にすら、同じ状況なら同じ事しますね。心を無にして。」
「………ええええ!?」
夏雪は、慌てる私に含み笑いで「キスってもっと違うと思いませんか?」と聞いた。
「ほら、こう…」
「んっ…っ」
そのまま強引に引き寄せられ、唇を甘く吸われる。身体が全部溶けてしまうくらいに熱くなって、それでもまだ夏雪の舌に翻弄される。
「っ…」
いつしか私も夏雪のキスに応じるように体を預けていて。どれだけお互いを味わっても、まだ、もっとと昂っていく。
「あそこにいるの、おーくんじゃない!?」