道化師は泣く
第二章 桜並木
入学式を終えた俺は、家に帰る途中で、姫花を見つけた。
姫花は、キラキラした眼差しで、工事現場を眺めていた。
「姫花!」
「龍也くん!入学式終わったの?」
「おぅ、姫花学校は?」
「始業式午前中だけだからさ!」
姫花は、昔から変わらない笑顔で話をした。
姫花が見てる工事現場には、【遊園地建設予定】
と書いてあった。
「ここ遊園地できんだ!」
「遊園地できたら、姫行きたいな、行けるかな?」
「親に連れてってもらえば?」
俺は、相変わらず素っ気ない言葉を言ってしまう…。
好きな女には、かっこよく、『俺が連れてってやるよ!』なんて、言えなかった。
「そうだね…姫、家族と行こうかな!」
姫花のその言葉に、少し傷ついた…まぁ、俺が家族と行けばって言ったんだけど…
「龍也くんも一緒に行く?」
「バッバカ!俺が遊園地なんて…」
「そっか、こどもっぽいかな?」
「しょうがないから、一緒に行ってやる!」
「やったー、嬉しい」
姫花は、昔の笑顔を俺に向ける!
一番嬉しいのは、俺の方だ、姫花と遊園地ってまさにデートじゃん!そう思っていた。
いつできるかも、いつオープンするかもわからない遊園地…
俺たちは、未来の話で盛り上がっていた。
2人で歩いていると、いつのまにか、朝の桜並木を歩いていた。
「龍也くんって桜みたいだね、」
姫花は、突然そう言った。
俺は、この時、その言葉の意味がよく分からなかった。
「俺が桜みたいって…どこがだよ!」
「どこって言われると、難しいけど、龍也くんは桜みたいに見えるの!」
俺は、ますます、姫花の言ってる事の意味がわからない。
それから、姫花は、話題を変えたかので、俺が桜みたいって話は、ほんの数秒で終わってしまった。
桜は、風に吹かれて、散っていく。
花びらを追いかける姫花を追いかけていると、いつの間にか、家に着いてしまった。