道化師は泣く
だが、春人の好きな人が姫花だと決まったわけではない。
俺は、春人の好きな人が姫花でない、別の人だと願っていた。
だが、そんな都合よく、工事現場を眺めてる女の子なんて、姫花以外に出てくるわけなく、その日の帰り道、あの桜並木を春人と帰っていると、春人が突然立ち止まった。
春人の視線の先には、確かに姫花が立っていた…
姫花は、俺たちに気づき、俺の名前を呼んだ。
「龍也くん!今帰り?」
「お、おぅ、姫花も今帰りか?」
「うん、そうだよ、!」
俺たちの話を、不思議そうな目で見つめる春人、
春人は、恐る恐る俺たちに近づいてきた。
「龍也、この子知り合いなのか?」
「あー幼なじみだよ、」
「まじで!」
春人は、驚いていだが、目が嬉しそうだった。
この前まで、名前も知らない子に恋をしていたわけだし、春人は、多分俺が姫花と幼なじみなら、姫花と知り合いになる機会が増えるのだと思っているのだろう。
「龍也くんのお友達?あ、私姫花っていいます」
「あ、俺、春人、よろしくな」
「はい、!よろしくお願いします」
春人は、すごく緊張していた。
俺は、春人は本気で姫花の事が好きなんだと思った。
それから姫花は、腕時計に目をやると、忙しそうに家へ帰っていった。
何か用事があるのだろうか?
そういえば、今日の姫花は、なんだか悲しそうな目をしているように思えた。
対象に春人は、嬉しそうな、満足したような顔をしていた。