陽だまりのブルー(仮)
1 予感
夏が始まる
私が一番大切にしているものは、今までの写真と思い出が詰まった、一冊の分厚いアルバムだった。
お気に入りは、保育園の時のどろあそび、幼稚園の時のいも掘り、小学生の時の運動会、中学生の時の文化祭、去年撮ったばかりの高校の修学旅行の写真。実はそのどれもに、一つだけ共通していることがある。それは……。
「なに、志帆(しほ)またアルバム見てんの?」
「そうだよ。だって面白いんだもん」
視線に気づき顔をあげると、さっきコンビニで一緒に買ってきたアイスを食べながら私の部屋でくつろぐ幼なじみが、呆れたようにこちらを見ていた。ほんとアルバム好きだな、と笑いながら。
「おー、保育園の時のじゃん。懐かしいな」
「あっ!ほら、圭(けい)のこの顔!いつ見ても笑えるよねー」
突然私の真後ろに移動してアルバムを覗いてくるので、思わず肩が跳ねてしまった。とっさに、泣きじゃくるまだ小さい頃の圭の写真を指差して誤魔化す。
「……ん?おい、まだ持ってたのかその写真!あ、でもこっちのやつはお前の方が顔やばいだろ」
近くに貼ってあった私の写真を指差す圭。その笑い声を耳元で聞きながら、私はまた勝手にどきどきしてしまう。圭にそんなつもりはないのに。私は幼なじみで、親友としか思われていないのに。
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