陽だまりのブルー(仮)
ふと、視線を感じてそちらを見ると、隣の席の真木 悠人(まき ゆうと)君と目が合った。
「……?」
なんだろう。少し首をかしげると、頬杖をついて、ふい、と反対側を向かれた。
……無視ですか。感じ悪い人だなぁ。今まで話したことは無かったけれど、関わらないで正解だったかもしれない。
「あ、次科学だったわ。移動だから、もう行くね」
「うん。バイバイ」
里奈は時計を確認して立ち上がり、教室を出るとき小さく手を上げた。私もそれに手をふって応えた。
「田辺(たなべ)さん」
聞き間違いかと思った。声の主は真木君で、なんだか申し訳なさそうな顔をしている。
「えっ?」
「さっきの話、ちょっと聞こえちゃって……勝手に聞いてごめん」
「なんだ、そんなことで……」
前言撤回。細かいことまで気にかける真木君はなんていい人なんだろう。これからどんどん関わろう。
「隣だし、私達の声が大きかったのもあるし、別に気にしなくてもいいよ!逆に変なこと聞かせてごめんね」
一瞬でも誤解してしまったことを詫びるつもりで謝ると、真木君も少し笑顔になって、そっか、ありがとうと言ってくれた。
それで会話が終わったと思い、前に向き直ろうとした私を、真木君は呼び止めた。
「あのさ、」
「ん?」
「花火大会二人で行くなら、よかったら俺も一緒に行って良い?」
「……え!?」
真木君は、あ、と気づいて付け足した。
「俺の友達も連れて、だけど」
はい?