優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~【リニューアル版】
『行ってくる』


下から愛想の無い旦那の声がかすかに聞こえた。


『行ってらっしゃい』


廊下の手摺りから下を覗き込んで、私はわざと大きめの声で言った。


旦那が雑に閉めたドアの音が、家中に虚しく響く。


でも…


何だかホッとする。


今からは1人の時間。


私は、家族のことを気にせず、黙々と5部屋分のカーテンを付け替える作業に専念した。


なぜ5部屋分かというと、3人の男性に加えて女の子達も2人いるからだ。


季節は…春。


5人の同居人を募集したら、ちょうど応募者が5人いた。


それぞれのスタートを切るために、新しい住まいとしてここを選んでくれたんだ。


都内だけど、都会からは少し外れたところにあるこの別荘。


私のパパが大好きだった場所。


ここに同居人を募り、一緒に仲良く生活すること。


食事はなるべくみんな一緒にすること。


それが…


パパの「遺言」だった。
< 5 / 204 >

この作品をシェア

pagetop