優しい愛に包まれて~イケメンとの同居生活はドキドキの連続です~【リニューアル版】
『ちょ、ちょっと待って』


私が、廊下で少しもたつくと、


『早く』


って、手を繋いだまま振り返って笑顔で言った。


その笑顔があまりに眩し過ぎて、私は…


このままどこかに連れ去られてもいいかな…って、バカなことを想像してしまった。


それにしても祥太君、結構、強引。


でも…嫌な強さじゃない。


ピアノのある部屋まで来ると、祥太君は私の手を離し、深呼吸してからゆっくりとピアノを弾き始めた。


とっても素敵なメロディー。


バラードで、私の好きな曲調。


鍵盤を優しく弾く指が、細くて長くてとっても綺麗。


時々、目を閉じる祥太君の長いまつ毛が印象的だ。


こんな素敵な人がコンサートホールで弾いていたら、きっとみんな目が釘付けになるだろう。


他の人なんて視界に入らないくらいに。


ピアノの迫力の中に感じる繊細さと優雅さ、その胸に響くあまりにも美しい旋律に、祥太君の真剣さが伝わってきて…とても胸が熱くなった。


自然に、涙が溢れてくる。


その瞬間、祥太君にはピアノが必要だ…って、そう心の底から感じた。


『…ありがとう。すごく素敵な演奏だった』
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