誰かを笑顔にしたいから



個室を離れ、美優と優斗は廊下を歩く。

「……まだ10歳の女の子が病気なんて……かわいそう」

ぽつりと優斗は呟いた。それをたまたま聞いていた上司は、優斗に声をかける。

「優斗くん……病気だから、かわいそうなんかじゃない。だから、かわいそうなんて言わないで」

「……」

上司の言葉に、優斗は俯いて黙り込んだ。

「ほら、笑いな!あんたは、笑顔が似合うから」

優斗の背中を叩き、上司は微笑む。顔を上げた優斗は、どこか儚げに微笑んだ。



「あれ?水野さんに、村川さん……」

美優は休憩に入り、売店に行こうと歩いていると、美優と仲の良い看護師の水野さんと美優と同じ病棟にいる医者の村川さんが並んで歩いているのを見つけた。

「あ、美優さん……こんにちは」

「こんにちは!」

「あれ?今日は、優斗くんは一緒じゃないんだ」

「うん。上司に呼ばれてる」

優斗は、休憩に入ったすぐに上司に呼ばれてどこかへ連れていかれたのだ。

「なるほどね……」

ふと美優が後ろを向くと、俯きながら廊下を歩く優斗がいた。それを見た美優は、優斗に近づく。

「優斗くん、どうしたの?」

「……皆さんは、何で今の職に就いたんですか?」

突然の優斗の問いに、皆は驚きを隠せなかった。
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