誰かを笑顔にしたいから
「……人を助けたいから」

看護師の水野さんが口を開く。それを聞いた優斗は「え……」と声を出しながら、顔を上げた。

「命を預かる、人を助けるって気持ちがなかったら、俺たち看護師は人の腕に針なんか刺せないだろ?」

「……僕も水野と一緒かな。ねぇ、急にどうしたの?」

「……患者さんに、冷たく当たってしまいました。暴れる患者さんに……!」

今にも泣きそうな顔で、優斗はすべてを話す。優斗は、暴れる患者さんに何と声をかけて良いか分からず、焦ってしまったらしい。

そのことで、優斗はこの仕事に就いた理由が分からなくなってしまっていた。

「そっか……私も昔、優斗と同じミスをしたことがあるな。でも、看護補助員だって医療従事者なんだからちゃんと責任持たないと!」

「……美優さんの言う通りかも……でも、医療従事者じゃなかったとしても、その辺は気を付けような」

美優と水野さんに言われ、優斗は俯いてしまう。それを見た医者の村川さんが口を開いた。

「医者は体の怪我や病気は治せる。でも、心の奥にある悲しみや苦しみはどんな良薬だって取り除いてあげられない。患者さんが暴れるのだって、きっと理由があるはずだから……それを支えるのは看護補助員でも出来るんじゃないかな?」

「その通り。看護補助員は、人を助けることは出来ない。でも、私たちにしかできないことだってたくさんある。だから、そんなに落ち込むな!」
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