誰かを笑顔にしたいから
美優はそう言って、優斗の肩に手を置く。優斗は、しばらく美優を見つめた後、美優に向かって微笑んだ。



「紗菜ちゃん」

あれから数か月。仕事に慣れ、1人で仕事をするようになった優斗は、休憩に入り、紗菜の病室に入った。紗菜から来て欲しいと言われたためだ。

「あ!お兄さん、来てくれた!」

満面の笑みを浮かべながら、紗菜は優斗を見る。

「ありがとうございました!」

紗菜のお母さんは、優斗の姿を見ると微笑んだ。あれから紗菜の病気は完全に治り、今日退院することになったのだ。

「紗菜、よく頑張ったね。おうちに帰ろう」

ぎゅっと紗菜の手を掴み、紗菜のお母さんは歩き出す。

「ま、待って……お兄ちゃん!」

紗菜は優斗に近寄り、優斗に紙を渡した。

「お兄ちゃんにあげる!ありがとね!」

優斗が紙を広げると、そこには笑顔の紗菜、美優、優斗がクレヨンで描かれている。

「……へぇ、絵上手だね。ありがとう」

優斗が微笑むと、こちらを振り返った紗菜は嬉しそうに笑う。

「そっか……僕がこの仕事に就いたのは、誰かを笑顔にしたいからなのか……」

紗菜の姿が見えなくなると、優斗は呟いた。そして、紗菜からもらった紙をポケットに入れ、病室を出た。
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