行き着く先は・・
(十九)
••何も知らないくせに
母が日本に到着して
少し落ち着いた時
聡吾さんに話す事になった。
修吾さんの部屋は
聡吾さんが嫌がると思い
会社の修吾さんの部屋となった。
私と修吾さんが、聡吾さんを待つ
母も自宅で待機中
« コンコン »
« どうぞ »と、修吾さん。
無言で入ってきた聡吾さんは、
私をチラリと見てソファーへと
座った。
私は、聡吾さんの横に少し離れて
腰かける。
私達の前に修吾さん。
「今日は、わざわざ呼び出して
すまなかった。」
と、言うが聡吾さんは、何も言わず
「実は、再婚したいと思っている。
聡吾は、俺に対して関心もなければ
父親として認めていないことも
わかっている。
だが、家族となる人だから
きちんと紹介したい。」
と、言うと
今まで黙っていた聡吾さんが
立ち上がり
「俺には、関係ない
あんたが誰と籍をいれようが
俺の親は、墓に眠る母さんだけだ。
好きにやってくれ。」
と、言いドアに向かう。
「聡吾さん、待ってください。
修吾さんの相手は、私の母です。
父が亡くなってから27年もの間
私を育てることに必死で生きてきた
母なんです。
幸せになって欲しいのです。
聡吾さんと修吾さんの間に
あるものの本質は、私にはわかりません。
それは当事者でないと
計り知れないと思います。
ですが、聡吾さんだけでなく
修吾さんも苦しんでいたのです。
もう、修吾さんも聡吾さんも母も
幸せになっても良いのでは
ありませんか?」
と、言った。
そんな私に聡吾さんは、
すごい顔付きで
「お前に何がわかる!!
母は、いつも一人で
知り合いもいないこの地で
生きていたんだ。
段々と壊れていく母を
見つめるしかなかった俺を
倒れていた母を見つけた時の俺を
目を覚ますことなく死んでいった
母の気持ちの
何がわかるんだ!!
こいつは、イタリアに連れてくるだけ
連れてきて放置して
壊れていく母を見殺しにしたんだ。
要らないんなら
離婚して日本へ帰せばよかったんだ
そしたら、母は今も元気でいたかも
知れない。」
と、私を睨みながら叫んだ。
今まで一緒に過ごした日々の中で
こんな感情を出す聡吾さんを
はじめてみた······
私がそれでも何か言おうとした時
パソコンに映る母が·····
「何も知らないで
知ろうともしないで
修吾ばかりをせめて
あなた、年はいくつなの?
あなたは、小さな子供と同じなのね。
修吾を憎んで生きて行くなら
ずっと、ずっと、死ぬまでそうして
いなさい。
私はね、ずっと苦しんできた
修吾と幸せになるから。
それに、希空も
何度も苦しみを味わってきた
私の命より大切な娘なのよ
そんな希空を傷つける事は許さない。」
と、言うと
「茜、ありがとう。
希空ちゃんもごめんな。
聡吾にきちんと接して来なかった
私が全て悪いんだ。
聡吾すまなかったな。
もう、いいよ。
帰りなさい。」
「「修吾・修吾さん。」」
と、母と希空
聡吾さんは、両手を握りしめ
力の強さにワナワナ振るえていた。
モデルである聡吾さんの手に
傷がつくと思い、
希空は、聡吾の手を握り
抵抗する聡吾をソファーに
もう一度座らせて
手当てをした。