先輩、後ろの2文字ください。
緩んだ腕の隙間から、目線を少し下げた位置にある頭に手を伸ばした。
柔らかな髪を優しく撫でれば、嬉しそうな表情を浮かべる彼。
「今のは、“ありがとう”ってことですか?」
「……」
キラキラした瞳で首を傾げる彼に、私はそっと目を逸らす。
「違うんですか? ……先輩、言葉にしてくれないとわからないです」
「…………すき」
「えっ?」
「だから……っ、みっくんのことが好きって意味!!」
「何度も言わせないで!」と怒った視線の先は、今も夜空に輝き続ける花火。
そっと手の甲で確認した頬の熱に、今が暗くて本当によかったと密かに思う。
「なんですか、それ……」
喜びを隠しきれない声が、笑い声に紛れて届く。
隙間なんて存在しないくらい、強く抱きしめられたふたりだけの世界で、彼は言う。