先輩、後ろの2文字ください。

「やっと、デレてくれた」

「え?」

「ずっと、待ってたんですよ? 夏帆先輩がデレてくれるのを」

「ずっとって……」


目を合わせれば、爽やかな笑みが返ってくる。


「僕が初めて、『夏帆ちゃん』って呼んだ日から」

「……っ」

「あ、真っ赤」

「うるさいっ!」


ポカポカと彼の掌を拳で殴る。
その攻撃を幸せそうな笑顔で受け止める彼は、今何を思い出しているのだろう。


「先輩」

「……」


私の手を捕まえた彼が、今度は真剣な瞳で私を見つめる。

捕まった手は、下から支えるように持ち上げていた。


それはまるで、おとぎ話の王子様とお姫様のよう。


「僕と付き合ってください」

「……はい」


とてもちいさい返事だったけれど、彼はそんなこと気に止めることなく今日一番の笑顔を私に見せてくれた。

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