先輩、後ろの2文字ください。
「よしっ! 先輩、見ててくださいね。これから、たくさんデレさせてあげますから」
「……そんなのいらないし! 甘えるときは、勝手に甘えるから!」
自信満々な彼にそう返せば、流れるのは沈黙だけ。
帰ってきた周りの声と街の音に、私は冷静になった頭で自分の発言を振り返る。
一度引いたはずの汗が、また額に流れた。
「いや、今のは、だから……」
「期待して、いいんですよね?」
「えっ……」
「期待、しますよ?」
肩に手を置いて少しだけ離した距離で、彼は熱のこもった瞳で私を見る。
「……うん。いいよ」
ちいさく頷いた私を彼は力いっぱいに抱きしめる。
夜空に咲いたハートの光に照らされながら、私たちは秘密の約束をそっと交わした。
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fin.。