介護士は恋をした

「おはようございます！」

朝の八時半、古市湊（ふるいちみなと）は紺色の制服に着替えて職場のドアを開ける。笑顔で挨拶をすると、同じ制服を着た先輩たちが「おはようございます」と挨拶を返してくれる。そして、ここにはたくさんのお年寄りがいる。湊の仕事は介護士だからだ。

福祉の専門学校を卒業した後、湊は施設実習で訪れたこの介護老人保健施設に就職した。決して楽な仕事ではないが、湊はやりがいを感じている。なぜならーーー。

「おはよう、古市くん！今日もいい笑顔じゃん！」

まるで鈴を転がしたかのような声に、湊の胸が高鳴る。振り向けば、湊より十センチほど背の低いポニーテールにした女性がニコニコ笑っていた。

「咲良さん、おはようございます」

「おはよう！今日も一日よろしくね〜」

先輩である古川咲良（ふるかわさくら）に笑顔で言われ、湊は「はい！」と元気よく返事をする。その胸は高鳴り、頬は赤い。湊は咲良のことが好きなのだ。