介護士は恋をした
「申し送り聞いたらオムツ交換するからね」

「わかりました!」

湊はそう言い、今日も頑張らなきゃと自分に言い聞かせる。窓の外ではセミがうるさいほど鳴いていて、もう働き出して五ヶ月ほど経つんだと湊は時間の早さに驚いた。

前を向けば咲良が申し送りを聞くために歩いている。その後ろ姿を見ていると、あの日のことが懐かしいなと湊は感じた。



「はあ……」

働き出してすぐのこと、湊はため息をつきながら更衣室で着替えを済ませて歩いていた。

足がやけに重い。明日は仕事が休みのはずなのに嬉しさなど微塵もなかった。ただ、昼間のことだけが頭に残って湊の心を締め付ける。

湊は今日、入浴介助をすることになった。入浴介助をはじめ、介助の方法は学校で嫌というほど習ってきた。湊は自信を持って入所者の人をお風呂に入れていたのだが、「お風呂に入りたくない!!」と抵抗する人が現れたのだ。

「お風呂入りましょう。気持ちいいですよ」
< 2 / 13 >

この作品をシェア

pagetop