茉莉花の花嫁
その声に視線を向けると、紺のスーツを着た背の高い男がいた。

ゆるくウェーブがかかっている黒い髪に目鼻立ちが整っている顔立ちに、茉莉花は見とれた。

何かスポーツをやっていたのか、体型はとてもがっしりとしていた。

「あ、あなたは…?」

茉莉花は戸惑いながら、男に聞いた。

男は茉莉花の質問を無視すると、
「こいつのこと、俺がもらってもいいんだよな?」

熊元に聞いた。

「えっ…?」

熊元も同じように戸惑っていた。

「あんたは結婚したい女性がいるから別れるんだろう?

だから、もらってもいいんだよな?」

何も答えない熊元に、男が聞いた。

彼の質問の意味がわかったのか、熊元はコクリと首を縦に振ってうなずいた。

「えっ…」

「行くぞ」

男に声をかけられたので、
「はい…」

茉莉花は椅子から腰をあげた。
< 11 / 70 >

この作品をシェア

pagetop