茉莉花の花嫁
目的のものを買って家に向かって歩いていたら、
「あっ、ハンドクリームと消毒用のアルコールを切らしてた!」

買い忘れていたものを思い出して、茉莉花は今きたばかりの道を引き返した。

(ハンドクリームがないと手荒れするし、消毒用のアルコールは常備していないとうるさいんだよね…)

やれやれと思いながら息を吐いた時、
「えっ…?」

視界に入ったのは、百合の花だった。

白やピンク、黄色のよく見かける百合じゃない。

「黒百合だ…」

黒い色の百合だった。

(でも黒百合って、寒いところ…それも、高山帯の草地でしか生えないはずなんだけど…)

何でこんなところにあるのだろうかと思っていたら、黒百合が振り返った。

「お前…」

「あ、あなたは…」

そこにいたのは、清瀬俊正だった。
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