茉莉花の花嫁
黒百合の正体は、清瀬だった…と言うよりも、彼の後ろに大きな黒百合があった。

「あっ…」

自分の見間違いかと思ったが、確かに黒百合がある。

「――清瀬、さん…」

茉莉花と清瀬はその場に立って、お互いを見つめあっていた。

見つめあっていたその時間を長く感じたのは、今日が初めてだったかも知れない。

「――見えるのか?」

清瀬が口を開いたかと思ったら、そんなことを言ってきた。

「えっ…?」

「俺にかけられた呪い――黒い百合が見えるのか?」

「呪い…?」

(一体、何を言っているんだろう…?)

茉莉花は、清瀬の質問の意味がわからなかった。

「見えるんだな?」

何も答えない茉莉花に、清瀬がもう1度聞いてきた。
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