茉莉花の花嫁
恐ろしい黒鬼に、清瀬は震えた。

「だ、誰か…!

誰かいないのか!?

鬼だ、鬼が出た!」

中に向かって叫ぶ清瀬だったが、誰も現れなかった。

(何でだ…?

何で誰も出てこないんだ…!?)

そう思った清瀬の心の中を呼んだと言うように、
「お前の家族やお前に仕えていた人間たちは、全て殺した。

お前が優しい心を持たなかった故に、この家の人間たちは死んだのだ」

黒鬼はそれは恐ろしい声で言った。

「そ、そんなことが…!」

できる訳がないだろうと言い返そうとした清瀬だが、
「この鬼を見下そうと言うのか?

鬼は人間と違って直接手を下さずに殺すことができるのだよ」

黒鬼は言い返した。

清瀬は震えることしかできなかった。
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