茉莉花の花嫁
あきらめているような清瀬のその様子に、茉莉花はチクリと胸が痛くなったのがわかった。

清瀬は、それでいいと思っているのだろうか?

「どうしてそんなことを言うんですか?

呪いをかけられたまま、あなたは1人で…」

そう思ったら、茉莉花の口は勝手に動いて音を発していた。

「1人はもうなれた。

長い時間をずーっと1人で生きてきたから、もうなれた」

清瀬は言い返した。

「そもそも、お前と俺は生きている時代も違う。

俺は大正時代の人間で、お前は今の時代を生きている人間だ」

「そんなのは…」

「同情か?」

言い返そうとした自分の言葉をさえぎるように、清瀬が聞いてきた。

「えっ?」

茉莉花は何を聞かれたのかわからなかった。
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