茉莉花の花嫁
(言ってしまった…)

だけども、今さら言ってしまったその言葉を取り戻すことはできない。

清瀬が何を言っているのかわからないと言った様子で自分を見つめていた。

「何を頭がおかしいことを言っているんだと言うのは、自分がよくわかっています。

つきあっていた恋人に振られて、気が動転したのかと言われても文句は言えません」

「いや、言おうともしてないけど…」

自分を見つめている茉莉花のその目は真剣で、そこから逃げるように清瀬は目をそらした。

隠している心の中が見えてしまうんじゃないかと、怖くなった。

彼女に見透かされてしまうんじゃないかと、不安になった。

「あなたを好きになってしまったから、あなたにかけられたその呪いを解きたいんです」

茉莉花の言葉に対して、清瀬は何も言い返さなかった。
< 42 / 70 >

この作品をシェア

pagetop