茉莉花の花嫁
「清瀬さん」

「帰る」

清瀬は椅子から腰をあげた。

「えっ、あの…」

「そんなことを言われても、俺には迷惑しか感じない」

それに対して、すぐに言葉を返すことができなかった。

「俺を好きになったから…だから何だよ。

そんなことを言われても迷惑なだけなんだ」

清瀬が背中を見せた。

「清瀬さん」

「もう、俺に関わるな。

どう言う形であったとしても、俺に関わるな」

清瀬がその場から立ち去った。

追いかけることができなかった。

その背中を追いかけたいはずなのに、躰が動かなかった。

清瀬に言われたその言葉に胸が苦しくて、どうすることもできなかった。

ドアが開いた音がして、すぐにドアが閉まった。
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