茉莉花の花嫁
赤ワインと白貝のムニエルを頼むと、それを食べながら清瀬は茉莉花の様子を観察した。

美味しいフレンチとワインに舌鼓を打って、恋人との楽しい時間を過ごしているようだった。

「――あのさ…」

料理を全て食べ終えると、恋人が話を切り出した。

（結婚だな…）

清瀬は心の中で呟くと、クイッとワインを飲んだ。

プロポーズを見届けたら、ここを後にするか…と思っていたら、
「――別れて欲しいんだ…」

恋人の口から出てきた言葉は、それだった。

予想もしていなかったことを恋人から言われたのは、茉莉花も一緒のようだった。

「はっ…？」

思わず呟いた自分の声は、彼らの耳に入っていないようだった。

だけども、先ほどまで食事を楽しんでいた周りの客たちは彼らの様子に気づいているようだった。
< 49 / 70 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop