茉莉花の花嫁
浮気は男の甲斐性だからと開き直ったように、そのうえ笑いながら言った夫に腹が立って離婚した…と、彼女は言っていた。

自分のそばにいてくれる存在を平気で捨てて、自分の幸せのために平気で他の女に乗り換えようとする恋人に、清瀬は腹が立っていた。

清瀬は椅子から腰をあげると、彼らが座っているテーブルに歩み寄った。

「――じゃあ、こいつは俺がもらっていいんだな?」

そう言った清瀬に、茉莉花は戸惑っているようだった。

当たり前か、知らない男にそんなことを言われて戸惑うのは当たり前か。

思わぬ人物の出現に戸惑っていたのは、恋人の方も一緒だった。

(ざまあみろ)

目を丸くして、何ともマヌケな顔で自分を見ている恋人に、清瀬は心の中でバカにして笑った。
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