茉莉花の花嫁
「俺、結婚したい女性がいるんだ」

「…はっ？」

そう言った熊元に、茉莉花は訳がわからなかった。

「結婚したい女性って…？」

それは自分じゃないのかと思っていたら、
「去年の春に入社して、化粧品売り場で働いている虎頭さんって言う女性と結婚したいと思っているんだ」

熊元が言った。

「ことう、さん…？」

自分の前で他の女性の名前を出された茉莉花はどうすればいいのかわからなかった。

「彼女と結婚したら、幸せな家庭を一緒に築いていけそうだなって思ったんだ。

君も知っている通り、俺は父子家庭で育ったから」

熊元は言った。

幼い頃に両親が離婚して父親に引き取られた熊元は、いつも寂しかったと言っていた。

父親は仕事で忙しくて家にいなくて独りぼっちの子供時代を過ごしていた彼は、母親がいる幸せな家庭を夢見ていた。
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